ベビーシッターが実践！イヤイヤ期を乗り切る魔法のフレーズ集

「イヤイヤ！」「やだ！」「自分でやる！」

朝の準備中、食事中、お出かけ前…突然始まる子どものイヤイヤ攻撃を受け困った経験はありませんか？
1歳から4歳にかけての「イヤイヤ期」は、多くのママが悩まされている時期ですよね。
ですが、この時期は子どもの自我の芽生えと自立心の表れであり、子どもの成長過程で必要なことなんです。

この記事では、イヤイヤ期に効果のある声かけ「イヤイヤ期を乗り切るフレーズ集」をご紹介します。これらのフレーズを使えば、明日からすぐに子どもとの関わりが楽に過ごせるようになるかもしれません^^

イヤイヤ期の心理と脳の発達

イヤイヤ期は、子どもの脳の発達と密接に関連しています。特に1〜4歳の時期は、感情や行動をコントロールする脳の前頭前野がまだ発達途上にあります。この時期の子どもは「やりたい！」という欲求は強く感じるものの、それをうまくコントロールする能力がまだ育っていないのです。

また、この時期の子どもは自分の存在を確立し始める重要な段階にあります。「イヤ」と言うことは、単なる反抗ではなく「自分はここにいる」「自分には意見がある」という自己主張の一形態なのです。子どもは「イヤ」と言うことで、自分の意思や感情を表現する練習をしているとも言えます。

さらに言語発達の観点から見ると、「イヤ」は子どもが最初に使いこなせる強力な言葉の一つです。まだ複雑な感情や要求を言葉で表現できない子どもにとって、「イヤ」は効果的なコミュニケーションツールとなります。

イヤイヤ期への対応で最も効果的なのは、子どもの感情を認め、受け止めること。その上で、選択肢を与えたり、ポジティブな言葉かけをしたりすることで、子どもの自立心を育みながら行動をサポートする方法が効果を発揮します。

年齢別の発達特性と効果的なコミュニケーション法

1歳〜2歳前半：感情表現が芽生える時期

この時期の子どもは言語発達の初期段階にあり、自分の気持ちを言葉で十分に表現できません。そのため、身体表現や単純な言葉で感情を表すことが特徴です。

発達特性と行動の背景

▪️言語能力が限られているため、感情を体全体で表現する
▪️「イヤ」「ダメ」などのシンプルな言葉を覚え、それを多用する
▪️自分の欲求が通らないとすぐに泣いたり、怒ったりする
▪️周囲の反応を見て自分の行動を調整する学習段階にある
▪️注意の切り替えが難しく、活動の移行時にイヤイヤが起きやすい

効果的なフレーズとその使い方

✔「〇〇ちゃんが悲しいの、わかるよ」
　・子どもの感情を代弁し、認めることで安心感を与える。
　・感情を言葉にすることで、子ども自身も自分の気持ちを理解する手助けになる。

✔「一緒にやってみようか？」
　・完全に手伝うのではなく、協力して行うことを提案。
　・子どもの「自分でやりたい」気持ちを尊重しながらも、困難を乗り越える手助けになる。

✔「これとこれ、どっちがいい？」
　・シンプルな二択を与えることで、子どもに選択権を持たせる。
　・自分で決める経験ができ、自己効力感が育つ。

✔「お片付けしたら、次は絵本を読もうね」
　・次に何が起こるかの見通しを伝えることで、活動の切り替えへの抵抗を減らす。
　・具体的で短い言葉で伝えるのがポイント。

1〜2歳の子どもとのコミュニケーションでは、言葉だけでなく表情やジェスチャーも重要です。温かい表情と優しいトーンで話しかけ、必要に応じて実際に動作を見せることで、言葉の意味を理解しやすくなります。また、この時期は子どもの気分や体調によって反応が大きく変わるため、柔軟な対応を心がけましょう。

2歳後半〜3歳：自我の拡大期

この時期になると自我がさらに強まり、「自分でやりたい」という気持ちがはっきりしてきます。言語能力も発達し、自分の要求や気持ちをより詳しく表現できるようになってきます。

発達特性と行動の背景

▪️「自分で！」という主張が非常に強くなる
▪️ルーティンや予測可能性を好み、急な変更に強く抵抗する
▪️好奇心が旺盛で「どうして？」という質問が増える
▪️想像力が豊かになり、ごっこ遊びを楽しむようになる
▪️まだ時間の概念が曖昧で、「待つ」ことが難しい
▪️物事の順序や因果関係に興味を持ち始める

効果的なフレーズとその応用例

✔「自分でできたね！すごいね！」
　・子どもの自主性と達成感を認める具体的な褒め言葉。
　・「上手に靴が履けたね！自分でできるようになったんだね」など、何ができたのかを具体的に伝えると効果的。

✔「〇〇するよ、準備はいい？」
　・行動の前に予告することで心の準備ができる。
　・「お風呂に入るよ、今のおもちゃと遊ぶのはあと3分で終わりにしようね」のように具体的な時間の目安を示すとより効果的。

✔「あと3回したら終わりにしようね」
　・明確な回数を伝えることで、終わりが見えて受け入れやすくなる。
　・約束した回数は必ず守り、「最後だよ、思いっきり楽しもうね！」と声をかけると、切り替えがスムーズになる。

✔「魔法の杖で変身！さあ、着替えるよ」
　・ごっこ遊び要素を取り入れることで、抵抗感を減らせる。
　・「カバさんみたいに大きなお口を開けて、ごはんを食べよう」など、日常の活動を遊びに変える工夫が有効。

2歳後半〜3歳児とのコミュニケーションでは、子どもの自主性を尊重しながらも、安全な枠組みを設けることが大切です。「赤いシャツか青いシャツ、どっちを着る？」のように、選択肢は提供しつつも、選択の範囲は大人が設定するというバランスが重要になります。また、この時期は説明を求めることが増えるため、シンプルながらも理由を添える説明が効果的です。

3歳〜4歳：社会性の芽生え期

言語能力がさらに発達し、より複雑な会話ができるようになる時期です。他者の気持ちへの気づきも生まれ始め、社会性が発達してきます。

発達特性と行動の背景

▪️言語能力の向上により、交渉や言い訳が上手になる
▪️「なぜ？」という質問がさらに増え、理由を求める
▪️自分なりのルールやこだわりが強くなる
▪️友達との関わりが増え、「公平」「順番」の概念が育つ
▪️感情表現が豊かになるが、まだ感情のコントロールは難しい
▪️自分と他者の区別がより明確になり、比較することも増える

効果的なフレーズとその実践方法

✔「どうしたらできると思う？」
　・問題解決能力を育てる問いかけ。
　・「お片付けを楽しくするには、どうしたらいいかな？」など、子どもの創造力と主体性を引き出す。
　・答えが出ない場合は「〇〇してみたら？」とヒントを出す。

✔「〇〇したあとで、△△しようね」
　・順序を明確にすることで見通しが立つ。
　・「歯磨きをしたあとで、絵本を読もうね」など、好きな活動を後に持ってくることで、前の活動へのモチベーションを高める。

✔「気持ちはわかるよ。でもルールはこうだよ」
　・感情を認めつつも、社会のルールを教える大切なフレーズ。
　・「怒りたい気持ちはわかるよ。でも叩くのはダメだね。こうしたらどう？」と代替行動を提案する。

✔「お友達も同じおもちゃで遊びたいんだね。交代で遊ぶ約束をしようか」
　・他者の気持ちに気づかせ、解決策を一緒に考える練習になる。

3〜4歳児との関わりでは、「なぜそうするのか」という理由の説明がより重要になります。単純な指示よりも、簡潔な理由を添えた説明の方が受け入れられやすくなります。また、この時期は「公平さ」への敏感さが高まるため、約束やルールの一貫性が特に大切です。褒め言葉も「えらいね」といった一般的なものより、「最後までがんばったね」「お友達に優しくできたね」など、具体的な行動や努力を認める言葉が効果的です。

場面別 魔法のフレーズ集と実践テクニック

食事場面でのコミュニケーション術

食事は多くの家庭でイヤイヤが発生しやすい場面です。栄養を取ってほしいという大人の思いと、子どもの好き嫌いや自己主張がぶつかりやすいシチュエーションでもあります。

イヤイヤの背景にある心理

▪️味や食感への敏感さ（感覚過敏の可能性もある）
▪️自己主張の場としての食事（コントロール欲求）
▪️空腹感の認識が未熟
▪️食事よりも魅力的な活動（遊び）への関心
▪️食べること以外の目的（注目を引く、大人の反応を試す）

効果的なフレーズとその活用法

✔「どの野菜から食べる？赤いの？緑の？」
　・選択権を与えることで主体性を尊重。
　・この時、「食べるかどうか」ではなく「どれから食べるか」という選択肢を提示することがポイント。

✔「このブロッコリーは小さな木みたいだね。恐竜さんみたいに食べてみる？」
　・食材に対する興味を引き出す想像的なアプローチ。
　・「にんじんを食べるとウサギさんみたいに目がよくなるよ」など、食べ物の特性や効果を楽しく伝える工夫も有効。

✔「一口だけ挑戦してみようか？」
　・ハードルを下げることで抵抗感を減らす。
　・「一口食べたら、すごいね！」と小さな成功を大きく褒めることで、次への意欲につながる。

✔「〇〇ちゃんも同じおかずを食べてるよ。みんなで一緒に『もぐもぐタイム』始めよう！」
　・仲間意識を活用した声かけ。
　・他の子どもや大人と一緒に食べる楽しさを伝える。

食事場面での対応のコツは、食べることそのものにプレッシャーをかけすぎないこと。「食べなさい」と言うよりも、楽しい食卓の雰囲気作りを心がけましょう。また、小さな皿に少量盛ることで「完食」の達成感を得やすくしたり、子どもが手伝える準備や片付けを担当してもらうことで、食事全体への参加意識を高める工夫も効果的です。

お出かけ準備のスムーズな進め方

急かされることが苦手な子どもたちにとって、お出かけ準備はイヤイヤの典型的な場面です。時間の制約と子どものペースのギャップがイヤイヤを引き起こしやすくなります。

イヤイヤの背景にある要因

▪️活動の切り替えの難しさ（特に楽しい遊びの最中）
▪️時間の概念がまだ曖昧で「急ぐ」ことの理解が難しい
▪️複数の指示への対応力がまだ発達途上
▪️自分でやりたいけれどまだ技術が追いついていない葛藤
▪️外出先への不安や未知の場所への抵抗感

効果的なフレーズとその実践ポイント

✔「靴下、自分で履けるかな？」
　・挑戦心に訴えかける言葉かけ。
　・「すごい！片方履けたね。もう片方も自分でできるかな？」と段階的に褒めることで達成感を味わわせる。

✔「3つ数えたら出発しようね。1、2…」
　・明確な区切りを作るカウントダウン法。
　・「10まで数えるね。その前に靴を履けたらすごいね！」など、ゲーム感覚を取り入れると効果的。

✔「今日のお出かけで何が楽しみ？」
　・ポジティブな見通しを持たせる会話。
　・「公園に着いたら、まずブランコに乗ろうか、すべり台にしようか？」など、楽しみな内容を具体的に想像させる。

✔「お着替えヒーローになれるかな？スーパースピードで着替えよう！」
　・遊び心のある声かけでモチベーションを高める。
　・「タイマーをセットするよ。終わるまでに準備できるかな？」といった時間を可視化する工夫も有効。

お出かけ準備をスムーズにするには、日常的な準備を一貫させることが重要です。「帽子→靴下→靴」など、いつも同じ順序で準備することで子どもも見通しを持ちやすくなります。また、十分な時間的余裕を持つことも大切。慌ただしい雰囲気は子どもの不安を高め、かえってイヤイヤを誘発することがあります。準備物を子どもの手の届く位置に置いておくなど、環境面での工夫も効果的です。

就寝時間の穏やかな移行法

夜になると元気が出てきて、なかなか寝たがらない子どもは少なくありません。一日の終わりの活動から睡眠への移行は、多くの子どもにとって難しい課題です。

就寝抵抗の背景

▪️昼間の活動の興奮が続いている
▪️「寝る」という行為への不安（暗闇への恐れ、親との分離不安など）
▪️FOMO（Fear of Missing Out）：何か楽しいことを逃してしまう不安
▪️身体的な疲労と精神的な興奮のアンバランス
▪️日中の十分な身体活動や適切な昼寝時間の調整の問題

効果的なフレーズとその応用

✔「お話を1つにするか、歌を1つにするか、選んでね」
　・限定的な選択肢の提示。
　・「今日は『ぐりとぐら』と『はらぺこあおむし』、どっちの絵本がいい？」など具体的な選択肢を示す。
　・この時、選択肢はどちらも就寝に向かう活動であることがポイント。

✔「明日起きたら、〇〇ができるね」
　・ポジティブな翌日の見通し。
　・「明日は公園に行く日だね。起きたらすぐに準備しようね」など、楽しみを具体的に伝える。
　・未来への期待が安心感につながる。

✔「ぬいぐるみさんも一緒に寝る準備をしようか」
　・お気に入りのぬいぐるみやタオルなど、安心アイテムを活用。
　・「くまさんもお布団に入って、一緒におやすみするよ」など、擬人化して伝えると子どもの想像力に働きかけられる。

✔「お部屋をおやすみモードにしようか。電気をちょっと暗くするね」
　・環境調整の声かけ。
　・「カーテンを閉めて、お星さまの時間にしようね」など、就寝に適した環境づくりを一緒に行う姿勢を示す。

就寝時間をスムーズにするためには、一貫した就寝ルーティンを設けることが非常に効果的です。例えば「お風呂→パジャマに着替え→歯磨き→絵本→おやすみの歌→消灯」といった流れを毎日同じ順序で行うことで、子どもの体と心が自然に眠りに向かうよう条件付けられていきます。また、就寝時間の30分前からはスクリーン（テレビ、タブレットなど）の使用を避け、照明を少し暗めにするなど、メラトニンの分泌を促す環境作りも大切です。

NGワードとその代替フレーズ：効果的な言い換え術

子どもとのコミュニケーションでは、言葉選びが非常に重要です。否定的な言葉かけは子どもの自尊心を傷つけたり、かえって反発を強めたりすることがあります。以下に、避けたい言葉とその効果的な代替フレーズを紹介します。

避けたい言葉①：「ダメ！」「やめなさい！」

「ダメ」「やめなさい」といった禁止の言葉は、子どもに何をすべきかを伝えていません。ただ行動を止めるだけで、代わりに何をしたらいいのかがわからないため、子どもは混乱してしまいます。

心理的影響

▪️子どもの自主性や探究心が抑制される
▪️「ダメな子」という自己イメージにつながる可能性
▪️禁止されることで、かえってその行動への興味が高まる
▪️大人との関係が「指示する→従う」という一方的なものになりやすい

効果的な代替フレーズとその使い方

✔「こうしてみようか」
　・代替行動の具体的な提案。
　・「砂を投げるのではなく、砂山を作ってみようか」など、建設的な別の遊び方を示す。

✔「○○するときは、教えてね」
　・事前の約束事として伝える。
　・「ハサミを使いたいときは、先に教えてね」など、安全への配慮を教える機会にもなる。

✔「それは危ないから、こっちで遊ぼう」
　・理由と代替案の同時提示。
　・「その棒は目に当たると危ないから、こっちのおもちゃで遊ぼうね」など、なぜダメなのかの理由を添える。

✔「お友達は痛いって言ってるよ。どうしたらいい？」
　・相手の気持ちに気づかせる問いかけ。
　・自分の行動が他者にどう影響するかを考えるきっかけになる。

「ダメ」の代わりに、具体的に何をしてほしいかを伝えることで、子どもは行動の指針を得ることができます。また、理由を添えることで、単なる命令ではなく、意味のある指示として受け止められやすくなります。

避けたい言葉②：「早くしなさい！」

「早く」という言葉は、子どもにプレッシャーを与え、かえって行動が停滞する原因になることがあります。子どもの時間感覚は大人とは異なり、「急ぐ」という概念をまだ十分に理解できていない場合もあります。

心理的影響

▪️焦りや不安から、かえって動きが鈍くなる
▪️大人の期待に応えられないという無力感
▪️自分のペースを尊重されていないという不満
▪️「急かされている」という否定的な感情体験

効果的な代替フレーズとその実践

✔「3つ数えたら終わりにしようね」
　・明確な時間の区切り。
　・「10まで数えるから、それまでにパジャマに着替えられるかな？」など、挑戦として提示する。

✔「○○したら、次は何をする？」
　・次の行動の確認。
　・「歯磨きが終わったら、次は絵本の時間だね」など、見通しを立てる会話に変える。

✔「お片付けレースしようか？」
　・遊び心のある促し。
　・「お片付け音楽が終わるまでに、どれだけ片付けられるかな？」など、ゲーム感覚を取り入れる。

✔「時計の長い針が○に来たら、出発しようね」
　・視覚的な時間の目安。
　・「あと5分で準備終了だよ。時計を見てごらん」など、時間の概念を育てる機会にもなる。

急かす代わりに、時間の見通しを具体的に示したり、次の活動への期待を高めたりすることで、子どもは自分のペースを保ちながらも、活動の切り替えに取り組みやすくなります。また、準備に十分な時間的余裕を持つことも、イヤイヤを防ぐ重要なポイントです。

避けたい言葉③：「どうして言うことを聞かないの？」

この言葉は子どもを責め立てる響きがあり、子どもの行動の背景にある気持ちや理由を考慮していません。また、抽象的な質問であるため、子どもは適切に答えることができず、コミュニケーションが行き詰まりやすくなります。

心理的影響

▪️自分が「悪い子」「言うことを聞かない子」というレッテルを内面化
▪️理由を説明する言語能力がまだ十分でないため、フラストレーション
▪️大人との関係性において、防衛的・回避的になりやすい
▪️自己効力感（自分はできるという感覚）の低下

効果的な代替フレーズとその活用法

✔「お話し聞こえてた？もう一度言うね」
　・確認の姿勢。
　・「大切なお話だから、こっちを向いて聞いてくれるかな？」など、注意を引く工夫をする。

✔「ママ/パパ/先生の話を聞くのは大切だよ」
　・シンプルな理由付け。
　「お話を聞くと、楽しいことや大切なことがわかるよ」など、聞く意義を伝える。

✔「目を見て話を聞こうね」
　・具体的な行動の指示。
　・「お話を聞くときはおもちゃを置いて、こっちを見てね」など、どうすればよいかを明確に伝える。

✔「今、〇〇で忙しいのかな？お話が終わったら続けようね」
　・子どもの状況への理解を示す。
　・子どもの活動を尊重しつつ、コミュニケーションの順序を整える。

子どもが言うことを聞かない背景には、様々な理由があります。単に「言うことを聞かない」と非難するのではなく、子どもが今何に集中しているのか、指示が理解できているのか、別の欲求や感情があるのかなど、行動の背景を考慮したアプローチが効果的です。また、短く明確な指示を出し、理解しやすい言葉で伝えることも重要です。

明日からすぐに使える実践テクニック

イヤイヤ期は子どもの発達過程で自然な段階です。適切に対応することで、子どもの自立心や感情表現の力が育ちます。最後に、日常のあらゆる場面で活用できる、効果的なテクニックをまとめます。

1. 選択肢を与える技術

子どもに選択肢を与えることは、自立心を育むために重要なことです。ただし、選択肢は2〜3つに限定し、どちらを選んでも大人が受け入れられる範囲にすることがポイントです。

実践例

✔「青いカップと赤いカップ、どっちがいい？」
✔「公園で遊ぶ？それとも室内で絵を描く？」
✔「お風呂は先にする？それともおやつの後にする？」

選択肢を与える時は、「〜する？しない？」という二択は避けましょう。これでは「しない」という選択をされる可能性があります。代わりに、どちらを選んでも前向きな結果になる選択肢を提示します。

また、年齢に合わせて選択肢の数を調整すると効果的です。1〜2歳児なら2つ、3〜4歳児なら3つまでの選択肢が適切です。多すぎると混乱の原因になります。

2. 感情承認の習慣化

子どもの感情を受け止め、言葉にして返すことは、イヤイヤ期の子どもとのコミュニケーションにおいて最も効果的な方法の一つです。感情承認は子どもに「理解されている」という安心感を与え、徐々に自分で感情を表現する力を育みます。

感情承認の基本ステップ

①まず子どもの表情や仕草から感情を読み取る
②その感情に名前をつけて返す（「悲しいんだね」「怒ってるんだね」）
③共感の姿勢を示す（「そう感じるの、わかるよ」）
④必要に応じて、適切な対処法を一緒に考える

実践フレーズ集

✔「おもちゃを取られて悲しいんだね」
✔「急に予定が変わって驚いたんだね」
✔「自分でやりたかったのに手伝われて、怒っちゃったんだね」
✔「新しい場所は緊張するよね」

感情承認が特に効果的なのは、子どもが強い感情に圧倒されているときです。この時、論理的な説明よりも感情に寄り添うことで、子どもは落ち着きを取り戻しやすくなります。カリフォルニア大学の研究によれば、感情を言葉にして認めてもらうことで、子どもの前頭前野が活性化し、感情調整能力の発達が促されるとされています。

3. 遊び心を取り入れる日常対応法

イヤイヤ期の子どもは、命令や指示に反発しやすい一方、遊びや楽しい活動には自然と引き込まれる特性があります。日常のルーティンに遊び心を加えることで、抵抗感を減らし、協力的な姿勢を引き出せます。

効果的な「遊び化」テクニック

▪️キャラクターになりきる
　→「恐竜さんみたいに大きな口でごはんを食べよう」
▪️物に命を吹き込む
　→「靴下くんがお家（足）に帰りたいって言ってるよ」
▪️競争の要素
　→「お片付けレース、よーいどん！」
▪️ストーリー性の導入
　→「お人形さんが寝る準備を手伝ってほしいって」

年齢別の遊び心テクニック

✔ 1〜2歳：シンプルな擬音や身体動作を取り入れる（「ブーブー車みたいに歯ブラシで走らせようか」）
✔ 2〜3歳：ごっこ遊び要素を活用（「お医者さんごっこで、お薬（歯磨き粉）を使おうか」）
✔ 3〜4歳：想像力を刺激するストーリー（「魔法の水で体を洗うと、強い力が出るよ」）

遊び心のある対応は、子どもの脳内でドーパミン（快楽物質）の分泌を促し、ポジティブな感情と記憶を作ります。これにより、次回同じ場面で抵抗感が減少する効果が期待できます。

4. 先の見通しを伝える技術

子どものイヤイヤの多くは、「何が起こるかわからない」という不安から生じています。特に活動の切り替え時には、事前に見通しを伝えることで抵抗を減らせます。

見通しを伝える効果的な方法

時間的見通し：「あと5分したら切り替えるよ」「3回数えたら始めようね」
▪️活動の順序：「歯磨きをしたら、絵本を読もうね」
▪️視覚的サポート：タイマーや時計を見せる、予定表や絵カードを使う
▪️日課の一貫性：毎日同じ順序で活動を行う

年齢別の見通し伝達テクニック

✔ 1〜2歳：短いフレーズと実物を見せる（「靴を履いたら、公園」と靴と公園の写真を見せる）
✔ 2〜3歳：シンプルな順序（「まず手を洗って、それからごはん」）
✔ 3〜4歳：より詳細な説明（「お買い物に行ったら、まずバナナを選んで、それからパンを買うよ」）

予測できるようにすることは、子どもに安心感を与え、自身の行動や感情をコントロールし状況に応じて適切に対応できる能力を大きく発達させるといわれています。

5. 親・保育者自身のセルフケア

イヤイヤ期の子どもへの対応は、大人にとっても大きな忍耐と精神的エネルギーを必要とします。子どもを効果的にサポートするためには、まず大人自身が心身の健康を保つことが不可欠です。

実践的なセルフケア方法

▪️深呼吸の習慣化：子どものイヤイヤに直面したら、まず3回深呼吸する
▪️自己共感の言葉：「これは一時的な時期。私も頑張っている」と自分に言い聞かせる
▪️小さな休息：子どもが安全な場所にいることを確認し、一時的に距離を置く
▪️サポートネットワーク：パートナーや友人、他の親との経験共有
▪️リフレッシュ：家族や友人、ベビーシッターなどに子どもを預け、物理的に距離を置く

完璧な親はいません。時には感情的になったり、理想的な対応ができなかったりすることもあるでしょう。そんな時は「次回はこうしよう」と前向きに考え、自分を責めすぎないことが大切です。子どもは大人の背中からも多くを学びます。

まとめ：子どもの成長を支える接し方

イヤイヤ期は、子どもの自我の芽生えと自立への重要なステップです。この時期に適切に対応することで、子どもは健全な自己主張と感情調整の基礎を身につけていきます。

日々の実践で最も大切なのは、子どもの気持ちに寄り添い、発達に合わせた対応をすること。そして、子どもの「今できること」を見極め、少しずつ自分でできる範囲を広げていく手助けをすることです。

選択肢を与え、感情を承認し、遊び心を取り入れ、見通しを伝える—これらの「魔法のフレーズ」と対応法を日常に取り入れることで、イヤイヤ期も親子の絆を深め、子どもの発達を支える貴重な時間となるはずです。

忘れないでほしいのは、イヤイヤ期は永遠に続くわけではないということ。この時期に培った適切なコミュニケーションの基礎は、子どもの将来の対人関係や問題解決能力にもつながっていきます。イヤイヤ期を「乗り切る」だけでなく、この時期だからこそできる発達支援と考えてみると気持ちが楽になるかもしれません^^