子どもがいじけたときの上手な対応法 – 心理的アプローチで解決する方法

「外出先で突然子どもが座り込んで動かなくなった…」「『やだ！』と言って何をしても聞いてくれない…」

そんな経験、ありませんか？子どもがいじけるとき、多くのママは「なぜ今？」と困惑し、イライラしてしまうこともあるでしょう。でも大丈夫です。これは子どもの成長過程で起こる自然な行動なのです。

この記事では、子どものいじける行動の心理的背景を理解し、その場をスムーズに乗り切る実践的な対応法をご紹介します。科学的根拠に基づいた方法を、日常で使いやすい形にまとめました。これを読めば、次に子どもがいじけても慌てることなく、冷静に対応できるようになりますよ。

いじける行動の裏側にある子どもの心理

子どもがいじけるとき、その行動には必ず理由があります。一見わがままに見えても、実は子どもなりの感情表現なのです。

自己主張の一形態

子どもが2〜4歳頃になると、「自分でやりたい」「自分の意見を持ちたい」という気持ちが強くなります。これは子どもの自立心の芽生えであり、健全な発達の証でもあります。しかし、まだ言葉で十分に自分の気持ちを表現できないため、いじけるという形で自己主張することがあるのです。

子どもの脳の発達研究によると、前頭前皮質（感情や行動をコントロールする脳の部分）はまだ発達途上。そのため、感情をうまくコントロールできず、思い通りにならないとすぐにいじけてしまいます。

注目を集めるための手段と兄弟関係の影響

「親の反応が見たい」「自分に注目してほしい」という気持ちからいじけることもあります。特に兄弟がいる場合や、ママが忙しいときにこの行動が増えることがわかっています。

人間関係の心理学では、否定的な注目でも、まったく注目されないよりはましだと考える傾向があります。子どもも同じで、叱られてでも自分に関心を向けてほしいのです。

兄弟関係では、特にいじけが顕著になることがあります。例えば、上の子に先を越されたとき（「お兄ちゃんは先にできたのに」「お姉ちゃんの方が上手」）や、兄弟間で不公平を感じたとき（「どうして私だけ？」）などです。これは比較による自己評価と競争心の表れであり、家族システムの中での自分の位置を確認する行動でもあります。特に年齢の近い兄弟では、この比較意識が強く働きます。

不安やストレスの表れ

新しい環境や初めての体験に直面したとき、子どもは不安を感じます。その不安から「動きたくない」「今のままでいたい」といういじける行動につながることがあります。

子どもの情緒発達の研究では、安心感が欠けると防衛反応としていじける行動が現れることが示されています。つまり、いじけることで自分を守ろうとしているのです。

効果的な対応法：心理的アプローチ

いじける行動の背景を理解したところで、具体的な対応法を見ていきましょう。特に兄弟がいる家庭では、これらの対応が子どもたちの関係性を育む大切な機会にもなります。

共感から始める

子どもがいじけたとき、まず大切なのは子どもの気持ちを認めること。「そんなことで泣くなんて」などと否定するのではなく、「悲しかったんだね」「やりたくなかったんだね」と共感の言葉をかけましょう。

感情を認めることで、子どもは「自分の気持ちを理解してもらえた」と感じ、次第に落ち着いてきます。感情を言葉で表現してあげることは、子どもの情緒発達にも良い影響を与えます。

選択肢を与える

「今から帰るよ」と一方的に言うのではなく、「あと5分遊んでから帰る？それとも今おもちゃを買ってから帰る？」など、選択肢を与えることで子どもに決定権を持たせましょう。

心理学では、この方法を「制限付き選択」と呼びます。どちらを選んでも親の目的（この場合は「帰ること」）は達成されますが、子どもは自分で決められたという満足感を得られるのです。

兄弟がいる場合は、それぞれに「選ぶ順番」を設けるなど、交代で主導権を持てる工夫も効果的です。例えば「今日はお兄ちゃんが選んで、明日は弟くんが選ぶね」というルールを作ることで、不公平感を減らせます。

事前の予告を心がける

急な予定変更や活動の切り替えは、子どもにとって大きなストレスです。「あと10分したら帰るよ」「3回滑ったら次の人の番だよ」など、前もって伝えることで心の準備ができます。

脳科学の視点では、予測可能性が高まると不安が減少することがわかっています。事前予告は子どもの安心感につながる大切なテクニックです。

気持ちを切り替える工夫

いじけている状態から抜け出すには、気分転換が効果的です。「あっ、あそこに何かいるよ！」「ママと一緒に数えてみよう、1、2、3…」など、注意をそらす言葉かけをしてみましょう。

注意の転換は、脳内の神経回路を切り替える効果があります。ネガティブな感情に焦点が当たっている状態から、新しい刺激に意識を向けることで、気持ちの切り替えを促すことができるのです。

避けたい対応と、その理由

効果的な対応がある一方で、避けるべき対応もあります。

感情的な叱責は逆効果

「いい加減にして！」「みんなが待ってるでしょ！」と感情的に叱ると、子どもはさらにいじける可能性があります。ママの怒りは子どもの不安を増幅させ、防衛反応としていじける行動が強化されてしまいます。

感情調整の研究では、大人が落ち着いた態度を示すことで、子どもも徐々に感情を落ち着かせることができるとされています。まずはママが深呼吸して、冷静さを取り戻しましょう。

過度な譲歩は自立を阻害する

いじけるたびに「わかった、わかった」と何でも譲ってしまうと、子どもは「いじければ望みが叶う」と学習してしまいます。これは心理学で「負の強化」と呼ばれる現象で、問題行動が増える原因になります。

適度な境界線を示すことは、子どもが社会のルールを学ぶ貴重な機会。長い目で見れば、子どもの健全な成長につながります。

年齢別アプローチ：発達段階に合わせた対応

子どもの年齢によって、効果的な対応は異なります。兄弟がいる場合は、それぞれの発達段階に合わせた対応が必要になるため、より工夫が求められます。

1〜2歳：シンプルな言葉と気分転換

この年齢の子どもは言葉の理解が限られています。「悲しいね」「つらいね」といったシンプルな言葉で共感し、すぐに気分を変える遊びや歌を取り入れましょう。

感覚運動的な発達段階にある1〜2歳児は、体を動かすことで気持ちを切り替えやすいという特徴があります。手遊び歌や体を使った遊びが効果的です。

3〜4歳：感情の言語化と論理的説明

言葉の発達が進むこの時期は、「どうして悲しいの？」と感情を言葉にする練習をしましょう。また、簡単な理由づけも理解できるようになるので「これをしたら、次はあれができるよ」といった説明が有効です。

象徴的思考が発達するこの時期は、「もし〜だったら」という仮定の話も少しずつ理解できるようになります。将来の楽しいことを想像させることも効果的です。

5〜6歳：自己調整力を育む対話

この年齢になると、自分の感情をコントロールする力が育ってきます。「どうすれば気分が良くなると思う？」など、子ども自身に解決策を考えさせる対話が有効です。

実行機能（計画を立てて実行する能力）が発達するこの時期には、子ども自身に考えさせることで、将来の感情自己調整力の基礎を築くことができます。

親子・兄弟の絆を深める機会として

子どもがいじけることは、決して悪いことばかりではありません。むしろ、親子のコミュニケーションを深める貴重な機会になりえます。兄弟関係においても、互いを理解し、思いやる気持ちを育む成長の機会となります。

子どもの感情に寄り添い、共に解決策を見つけていく過程は、子どもに「ママは自分の味方だ」という安心感を与えます。この信頼関係は、子どもの感情的な安定や自己肯定感の土台となるのです。

いじける場面で冷静に対応できたとき、「今日はうまく対応できたな」とママ自身も自信を持ってください。完璧な対応ができなくても、次回に活かせばいいのです。子育ては日々の学びの連続。ママも子どもと一緒に成長していくものなのです。

子どもがいじけても、それは発達の一過程。温かく見守りながら、適切な導きを与えることで、子どもの感情コントロール力や社会性が育まれていきます。

兄弟がいる家庭では、いじける場面を「思いやりを教える機会」として活用することもできます。「弟くんが悲しんでいるね。どうしたら喜ぶと思う？」と上の子に問いかけたり、「お姉ちゃんもこうやって待っていたんだよ」と共通体験を伝えたりすることで、兄弟間の絆も深まります。

今日からできる小さな工夫で、親子や兄弟の時間がより豊かなものになりますように。