子どもの成長を促す「過程を褒める声掛け」のすすめ

「頑張ったね！」「すごいね！」と子どもを褒めるとき、あなたはどのように声をかけていますか？「上手にできたね」と結果を褒めることが多いでしょうか。それとも「一生懸命取り組んだね」と過程を褒めることが多いでしょうか？

私たち大人は子どもの成長を願い、自信を持ってほしいと思うからこそ、褒め言葉をかけます。でも、褒め方によって子どもの成長に与える影響は大きく変わることをご存知ですか？「過程を褒める声掛け」は子どもの意欲や粘り強さ、そして将来の可能性を広げる素晴らしい効果があります。この記事では、なぜ過程を褒めることが大切なのか、具体的にどう声をかければよいのかを科学的・心理的観点からわかりやすく解説します。

結果褒めと過程褒め、その違いとは？

褒め方には大きく分けて「結果褒め」と「過程褒め」の2種類があります。

「結果褒め」とは、子どもの能力や出来栄えなど、結果に対して褒める声掛けです。 例：「天才！」「すごく上手に描けたね」「全部正解だね！」

一方「過程褒め」とは、子どもの努力や工夫、挑戦する姿勢など、取り組む過程を褒める声掛けです。 例：「諦めずに頑張ったね」「いろんな色を使って工夫したね」「難しい問題に挑戦したね」

この違いは一見小さく見えますが、子どもの心の成長に大きな違いをもたらします。

過程を褒めると子どもの心にどんな変化が起きる？

「成長マインドセット」が育まれる

心理学者のキャロル・ドゥエック博士の研究によれば、人の考え方には「固定マインドセット」と「成長マインドセット」があります。

固定マインドセットの人は「能力は生まれつき決まっている」と考え、失敗を恐れる傾向があります。一方、成長マインドセットの人は「努力や学びによって能力は伸びる」と信じ、困難にも前向きに取り組みます。

子どもの結果ばかりを褒めると「私は頭がいいからできた」「私は絵が上手だから褒められた」という固定マインドセットが育ちやすくなります。逆に過程を褒めると「頑張れば上手くなる」「挑戦することが大切」という成長マインドセットが育まれるのです。

「やり抜く力」が身につく

近年の研究では、人生の成功には知能指数（IQ）よりも「やり抜く力（グリット）」が重要だと言われています。これは困難に直面しても諦めず、長期的な目標に向かって粘り強く取り組む力のことです。

「難しいところまで挑戦したね」「何度も練習したね」といった過程を褒める声掛けは、この「やり抜く力」を育みます。子どもは「頑張ることが価値ある」と学び、困難にぶつかっても諦めずに取り組む姿勢が身につくのです。

失敗を恐れない心が育つ

結果ばかりを褒められると、子どもは「いつも成功しなければならない」というプレッシャーを感じてしまいます。そして失敗を恐れ、新しいことに挑戦する勇気が持てなくなってしまうことも。

一方、過程を褒められた子どもは「失敗しても大丈夫」と感じ、チャレンジ精神が育ちます。「うまくいかなかったけど、いろいろ試したね」といった声掛けが、失敗を学びの機会と捉える力を育てるのです。

効果的な「過程褒め」の実践方法

具体的に観察して褒める

「頑張ったね」だけでは抽象的です。どんな点が頑張っていたのか、具体的に伝えましょう。

×「よく頑張ったね」 ○「難しい部分も諦めずに取り組んでいたね」 ○「昨日よりも長く集中して取り組めたね」

子どもの様子をよく観察し、具体的な過程を言葉にすることで、どんな取り組み方が価値あるものなのかを子どもに伝えることができます。

比較するなら「過去の自分」と

他の子と比べて褒めるのは避けましょう。競争意識が生まれ、「他の子よりできないとダメ」という考えにつながりかねません。

×「○○ちゃんより上手にできたね」 ○「前はできなかったことが、今日はできるようになったね」 ○「昨日よりも丁寧に描けているね」

過去の自分と比べて成長を感じられると、子どもは自分のペースで成長する喜びを知ります。

失敗やつまずきも価値あるものとして認める

子どもがうまくいかなかった時こそ、過程を褒めるチャンスです。

「残念だったね」で終わらせず、その取り組みの価値を認めましょう。

×「次は頑張ろうね」 ○「難しかったけど、最後まで挑戦したね」 ○「うまくいかなかったけど、いろんな方法を試したね」

失敗も含めた過程全体に価値を見出す声掛けが、子どもの挑戦する勇気を育みます。

日常の場面別「過程褒め」の例

お絵かき・工作の場面

×「すごい！天才！」「上手に描けたね」 ○「いろんな色を使って工夫したね」 ○「難しい形に挑戦したね」 ○「集中して丁寧に仕上げたね」

お手伝いの場面

×「お手伝いできてえらいね」 ○「最後まで責任を持ってやり遂げたね」 ○「分からないところは聞いて工夫していたね」 ○「お皿を割らないように慎重に運んでいたね」

勉強・宿題の場面

×「100点取れてすごいね」 ○「毎日コツコツ練習したからできるようになったね」 ○「間違えたところをよく見直したね」 ○「難しい問題にもチャレンジしていたね」

「過程褒め」を続けることの長期的な効果

過程を褒める声掛けを続けることで、子どもは「努力すること」「挑戦すること」「工夫すること」に価値を見出すようになります。これらは学校生活だけでなく、将来の仕事や人間関係など、あらゆる場面で役立つ力です。

また、大人になっても「自分はこうあるべき」という固定観念に縛られず、新しいことに挑戦し続ける柔軟性も身につきます。変化の激しい現代社会で生きていくために、とても重要な資質と言えるでしょう。

まとめ：子どもの可能性を広げる褒め方を

「過程を褒める声掛け」は、単なる褒め方のテクニックではありません。それは子どもの心の成長に深く関わる、大切な関わり方です。

結果だけを見るのではなく、子どもの「頑張る姿」「挑戦する姿」「工夫する姿」に目を向け、その価値を言葉にして伝えていくことで、子どもは自信を持ち、粘り強く、そして柔軟に成長していくでしょう。

毎日の何気ない声掛けが、子どもの未来を大きく変える可能性を秘めています。明日からでも、ぜひ「過程を褒める声掛け」を意識してみてください。子どもの新たな姿に、きっと驚かされることでしょう。